顧客満足度調査
CS調査Customer Satisfaction Survey

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5. 分析手法と質問体系は表裏一体

手法に踊らされない&目的を見失わない。

顧客満足度調査の分析手法としては、一般的な調査・統計手法として、「相関係数」、「偏差値」、「因子分析」、「重回帰分析」……などなど、いろいある。だが、そうした分析手法に幻惑される前に、どのような内容が知りたいのか、目的を見失わないで欲しい。

分析軸の考え方、クロス集計の考え方、など、ベーシックな分析だけでも見えてくるものがある。

重要度×満足度のCSポートフォリオ分析

顧客満足度調査の分析手法といえば、最もポピュラーなのは、
重要度×満足度のCSポートフォリオ分析、と言われるものではないだろうか。
横軸(x軸)に重要度を、縦軸(y軸)に満足度をとって、顧客満足度の評価項目を座標軸の中に分布させたものである。

CSポートフォリオ

横軸(x軸)の重要度、縦軸(y軸)の満足度との関係によって、基本的に座標軸は4つの象限に分けられる。

-右上の象限<強みエリア>は、重要度が高く、満足度も高い
-右下の象限<弱みエリア>は、重要度が高いのに、満足度は低い
-左上の象限は、重要度は低いが、満足度は高い
-左下の象限は、重要度も低く、満足度も低い
したがって、右下の象限<弱みエリア>が最も改善プライオリティ(優先順位)が高い、というわけだ。

一般には、<相関係数>というものを用いる。総合満足度という評価項目を1問設け、その総合満足度と、それ以外の様々な満足度評価項目との相関性を算出したものだ。相関係数が大きい項目ほど、総合満足度との相関が大きいわけだから、重要度が高い、というわけだ。

はっきり言えば、相関係数というのは、数ある統計学的な分析手法の中でも、最も初歩的なものの一つである。
顧客満足度調査の分析手法としては、他にも、「偏差値」、「因子分析」、「重回帰分析」……などなど、いろいある。
だが、そうした分析手法に幻惑される前に、それがどのように役立つか、を考えてほしい。自分で報告書の内容を説明する際に、質問が出たら説明に困るような統計手法を使いまわすよりも、即戦力として使える分析手法をフルに利用した方が、速い。加えて、説明する側への説得力も出る。

つまり、現状課題を探し、課題解決に繋がるアイディアが出れば、手段(=分析手法)は何を使ってもよいということ。手法に踊らされる必要は全くない。

クロス集計こそ分析手法の基本

まず、ベーシックな分析手法という点で重要なのが、クロス集計である。

ああクロス集計か、と拍子抜けされる前に、そもそも分析手法というのは、なんのためにあるのかを考えてみよう。

顧客満足度調査における分析手法とは、
顧客が不満に思っていることは何か?を明確にするその不満の要因は何か(=どうすれば改善できるのか)?を明確にするということのためにあるはずだ。

しかし、これまで述べてきたように、「顧客が不満に思っていることは何か?」はわかっても、「その不満の要因は何か(=どうすれば改善できるのか)?」については、調査の素人や下手な調査会社ではなかなかわからないのである。

実践レベルで、即、役に立つ手法は、質問項目を作成する段階で、評価項目(5段階評価や4段階評価の質問項目)について、その評価が低い場合の要因と考えられる仮説をいくつも立てて、それを実態項目という観点から質問することである。

※詳細については、こちらをご参照下さい。

要するに、顧客満足度調査の質問体系は、
評価項目 = 顧客が不満に思っていることは何か実態項目 = その不満の要因は何か(=どうすれば改善できるのか)? から成り立っていて、実態項目(評価項目不満要因の仮説)こそが本当は重要なのである。

したがって、顧客満足度調査の分析手法の本質は、まさに、
評価項目と実態項目のクロス集計分析 ということができる。

評価項目と実態項目のクロス集計分析について、まず簡単な例を挙げてみよう。

デザインに関する不満の例
たとえばある商品に関して、デザインの顧客満足度が低いのだ、デザインの不満の要因は何か(どうすれば改善できるのか)?についてはわからないという場合だ。

この場合、まず「デザイン」に関する満足度を質問した上で、デザインの改善要望について質問する。
以下は、Q1がザインの評価項目、Q2が実態項目(デザインの不満要因の仮説)というわけだ。

ほとんどの顧客満足度調査では、Q1ばかりを質問して、Q2はまったく質問していない。だから、デザインが不満と言われても、「色」が悪いのか、「大きさ・サイズ」が悪いのか、「質感・材質」が悪いのか、それではまったくわからない、ということになるのだ。

Q1.デザインについて、評価を教えて下さい
  • 1. 非常に満足
  • 2. 満足
  • 3. 普通
  • 4. 不満
  • 5. 非常に不満
Q2.デザインについて、改善を望むことをいくつでもお選び下さい。
  • 1. 色
  • 2. 大きさ・サイズ
  • 3. 重さ
  • 4. 持ち運びやすさ
  • 5. 質感・材質
  • 6. 外観
  • 7. その他(     )
  • 8. 改善を望むことは特にない

Q1の評価項目と、Q2の実態項目をクロス集計すれば、「4.不満」の人や「5.非常に不満」の人は、特にどういう改善を望んでいるのかがわかる。

コールセンター(お客様電話窓口)の電話口での待ち時間の例
その他の例としては、実態項目の選択肢を数値化することによって、顧客満足向上のための数値目標を算出することもできる。

以下は、質問Aが電話口での待ち時間の評価項目、質問Bが実態項目(電話口での待ち時間)となる。

質問A.「電話が繋がってからオペレーターが出るまでの待ち時間」について、評価を教えて下さい。
  • 1. 非常に満足
  • 2. 満足
  • 3. 普通
  • 4. 不満
  • 5. 非常に不満
質問B.電話が繋がってからオペレーターが出るまで、電話口で何分くらい待ちましたか?
  • 1. 0秒
  • 2. 30秒
  • 3. 1分
  • 4. 3分
  • 5. 5分
  • 6. 10分(以上)

上記の質問Aと質問Bをクロス集計すれば、電話口での待ち時間で、「満足」と回答した人と、「不満」と回答した人の電話口での平均待ち時間(体感時間)が算出できる。

それが、以下の表だ。ここから、次の数値目標が決定される。

★電話の繋がりやすさの満足度を上げるためには、57秒以内に必ず電話口に出る
★電話口で93秒以上待たせては絶対いけない

電話口での待ち時間 電話口での待ち時間
「非常に満足」と回答した人
「満足」と回答した人
「普通」と回答した人
「不満」と回答した人
「非常に不満」と回答した人
平均  18秒
平均  57秒
平均  66秒
平均  93秒
平均 108秒

オペレーターが出るまでの待ち時間は、短いほうが良いのは言うまでもない。しかし、そのためには、電話回線の数とオペレーターの数を大幅に増やすしかなく、大きな投資が求められる。

この場合、単に電話口での待ち時間を改善することが重要、という結論は誰でも出せるが、現実的ではない。

何秒以内までならぎりぎりセーフなのか、顧客の許容範囲を見極め、効率投資をすることこそ重要であり、顧客満足度調査はそうした分析にも効果を発揮する。

上記のコールセンターの電話の繋がりやすさの例は、たとえば、
・(顧客満足度から見た最適な)、バッテリーの駆動時間の算出
・(顧客満足度から見た最適な)、営業マンの訪問頻度の算出
・(顧客満足度から見た最適な)、机の広さ(タテ×ヨコ)の算出
といったように、さまざまなことに応用できる。

たかがクロス集計とあなどるべきではない。顧客満足度調査の分析手法として、評価項目と実態項目のクロス集計分析は、即戦力として使える。

例えば、分析軸についても同様だ。

顧客満足度調査の目的が、「顧客の生涯顧客化」であるならば、
そもそも
「ロイヤリティの高いお客様とは、具体的にどういうお客様なのか?」
~顧客の購買頻度、各種タッチポイントでの接触頻度、製品・サービス利用年数など
=自社にとって大事にしたいお客様の定義・基準

を定義・明確化し、それにそった集計&分析をしていかなければならない。
つまり、その分析の切り口(=集計軸)自体が、調査目的と直結しているのである。
顧客満足度のデータを、「顧客ロイヤリティ別=例:顧客の製品・サービス利用年数別」にクロス集計をする。

それによって、ロイヤリティの高いお客様と、低いお客様の満足実態の差が導き出され、
自社の顧客ロイヤリティ形成のための促進要因&阻害要因常連客を一見のお客様とは異なる体験・サービスをしていくために必要な満足度向上指針 が導き出される。

「性別・年齢別」や、「エリア別」などで得られる情報とは異なる、自社の戦略に直結した情報だ。

むろん、そのためには、調査設計・質問紙作成段階で、評価項目と、その評価の要因仮説としての実態項目が考え抜かれ、どのように分析していくか、あらかじめアウトプットイメージが計算され尽くしていなくはならない、ということである。

それができるかどうかによって、顧客満足度調査の成否が決まる。顧客満足度調査に関する正しい知識と豊富な経験を持った専門家が求められるゆえんである。

【分析手法の基本的な考え方】

  • 目的が達成できれば、どのような分析手法を使ってもよい。
    同じように目的が達成できるのなら、実践的でシンプルな手法の方が、即戦力となる。
  • あなたが必要としているのは、「調査をすること」ではなく、「調査から得た情報を活かすこと」にあるはずなのだから。
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